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『居合道真諦』その6
こんにちは。
『居合道真諦』のご紹介は、前回で一旦終わらせることにしたのですが、追加のご紹介です。
このブログの始めの方で、柄の長さの事を書かせていただきましたが、河野先生の文章を全文ご紹介する方が宜しいかと思い、以下全文を掲載いたします。
◎柄手の参考
一、柄の握りかたに就いては既に前著書で述べておいたが、対敵の居合と死物に対する据へ物斬り(試斬)の両手の間隔は、夫々相異すると云ふ事を参考にまで述べて見度い。
一、柄にかけた両拳の間隔は広い程、第二刀第三刀と素早く切返し斬込む場合ひに、刀の立ち直りは早いが、相当錬磨を重ねないと刃筋が通り難たいものである。
反対に両拳の間が、狭い程、刃筋は正確に立ち易いが、第二刀第三刀と連続斬撃の場合に刀の立ち直りが遅い欠陥がある。一、此の意味に於て居合にも剣道にも経験の乏しい者が、死物を切断して刀の刃味と自己の手の裡を試す据物試し斬りを行ふ場合は、なるべく両拳を近接して(両拳の密着せざる程度)柄を握るのが最も効果的であると思ふ。
然しながら対敵刀法である居合の柄の握りかたは、正常の柄では(古来より刀の長さは二尺三寸を定寸とし、柄は八寸を度とする)椽金と頭金具を避けて諸手をかけるのが尤も正しい握りかたである。一、居合または真の正しい剣道を学んだ者はたとへ据物試しの場合ひでも、この居合の柄の握りかたで十分刃筋は通らねばならぬ。
◎試斬に対する私の多年来の持論は、居合も剣道も心得の無い者は大いに据物試しを研究すべきであるが、真剣武道修錬の者は別段試斬りの必要は無いと思ふものである。
一、私は多年来肥後拵への渋味を好み、柄は皮柄中くぼみ巻七寸と七寸五分のものを愛用して居るが、椽頭が五分で握った両拳の間隔は下部で一寸〜一寸五分程あいておる。
◎因みに七寸柄の刀身は、肥前國陸奥守忠吉長サ二尺四寸八分。
七寸五分柄の刀身は、関住、大和守藤原金蔵長サ二尺五寸一分。
完
ご紹介してきた「無双直伝英信流嘆異録」はこの”柄手の参考”をもって 完 となっております。
河野先生の差料は肥後拵、その柄巻は皮柄・中くぼみと書かれておりますが、多分皮は鹿皮の表革だと思います。
問題は中くぼみ巻きですが、今之をスッキリ巻ける職人は居なくなったと聞いております。
残念なことですが、最近の巻きを拝見するとボテッとした太い巻き(好みもありますが)で、肥後拵の特徴である両立鼓をとった少しうすめの柄にはなっておりませんでした。
『居合道真諦』には、まだまだ興味深い内容が沢山収められております。
近々、ご紹介を再開して皆様の研究の参考に供したいと考えております。
有難うございました。
2013/7/23 国際連盟ブログより再掲
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