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74年前の著書ー3
引き続き「居合の質疑解説」のご紹介を続けます。
其六、 抜付けに於ける踏み出す脚に就きて
- 抜き付けの前に踏み出したる脚の内方角度(膝の内側)は、九十度よりは少しく小さく、上体を前に倒すにあらずして、下腹に力を入れて前に押し出す気味合ひにて、少しく前に掛る方宜敷く候。
後方の脚は、上体の延線よりずっと後方に開き、上体の重心は、凡そ前足先と後足膝頭の中間に落ちる位ひを適当と考へられ候、尚又此の場合ひ体を前に屈むるは不可にし て、只下腹を前に押出して上体は垂直のまゝ少しく前懸る心持となすを可と致し候。
其七、 立膝の血振につきて
- 右脇への血振は、真向に打下したる線に並行よりも、少しく剣尖が外方に向く位いとし、刀は水平よりも少し剣尖を下ぐる方宜敷く候。
其八、 八重垣の動作につきて
- 右足を踏み出すや刀を一文字に抜き付け、左足を前に踏み出し右膝を床に付く(此場合の動作は一動にて行ない、此動作中に雙手上段に冠る)すでに打ち下す時は右膝は床につき居りて、納刀は全体勢の儘にてなし、次に左足を右足の後に大きく踏み開き、(此時左足の動作始まると同時に右膝は床より浮かす)半身となりて脛囲ひに移る様に致し候。
其九、 颪の柄当につきて
- 颪の柄当は、敵が我が柄を取らんとするを、其前屈みになりたる敵の顔面中心(人中)を、柄頭にて突くものに候。
其十、 業と業との間につきて
- 総じて業のあひだには、必ず一動毎に少しの間を置き、決して一連に行ふものには無之候、此一連に行ふは最も不可にして、少しの間と云ふものは時間的のものにては無く、「一動の終りにグッと確かなる力の締り」を必要と致し候、而して次の動作は更に新たなる力と気合を以て行ふものに候。
此の少しの間と云ふは、初心の内は十分落付きて業と業とのあひだに区切りを作り、錬熟するに連れて此の間をつめ、然して此の業と業との間に力の締りある如く行ふを可と致し候。
以 上
次の、第八節には、「居合初心者心得」が掲載されています。故穂岐山先生が大日本武徳会大阪支部の要請で開催された講習会(昭和2年~9年)のおりに河野先生にされた注意事項をまとめたもので、30項目に渡っています。
いろいろな方が紹介なさっていますが、全文を紹介した例をブログ筆者は勉強不足で知りません。
殆どの方がご存じ無いかと思いますので、次回からその全文をご紹介して行こうと思っています。
私がいつも疑問に思うのは、80数年前に、土佐で行われていた英信流を正しく伝えて行こうと努力なさった穂岐山先生・福井先生・河野先生方のその努力の跡が、我々平成の剣士達に殆ど伝わっておらず、夫々我流に陥っている現状です。
何故なんでしょうか?伝えていく事の難しさが、河野先生をして一連の著作への原動力に成ったのでしょうか。
今では、判らない事だらけではありますが、自己満足に陥る事無く、我々にだって出来る可能性を信じて正統正流の英信流を日々稽古研鑽して行きたいものです。
又、次回をお楽しみに。
2013.08.13 国際連盟ブログより再掲
World MJER Iaido Federation
© 正統正流無雙直傳英信流居合道国際連盟